到津の森公園

名誉園長の部屋 公園だより

国立動物園その2
アフリカゾウの子どもたち

【研究機関でもある動物園】

 

都市に動物園があるのだからいいのではとお思いでしょうが、地方都市の多くは地域観光と結びつき、そのための施設となっています。旭川市の動物園が 300万人の入園者を数えた時旭川周辺の経済的効果は数十億円とも100億円とも言われました。当時紙面を賑わせたのは行動展示という新しい展示方法であ り、以来この展示方法を用いればどの動物園も入園者数がうなぎ登り!という錯覚さえ生みだしてしまいました。つまりこの手法は地域活性化の救世主である と。しかし、作った動物園の人々が意図した、動物を通した教育や野生動物の生活や環境に言及した記事は皆無でした。

 

動物園はただただ地域の観光目的にあるのではありません。もちろんそのような側面があったことは事実です。が、ことここに至ってその主人公である動物を取り巻く環境が加速度的に悪化していることの方こそ重大です。

 

私たちは本当に動物のことを知っているのでしょうか。動物の住む世界のことを知っているのでしょうか。形ばかりの姿に狂喜するだけでその動物の住む 環境や動物そのものを知ることに繋がっていなかったのではないでしょうか?ゾウは大きいからゾウではないのです。それは人の世界に置き換えるとよく分かり ます。人は人の形をしているから人ではなくて、人としての生活をしているから人なのでしょ。

 

今、必要なのは生息する環境や人との関わり合いを通じて動物の本質を伝え、共に地球に生活する種として自然界を共有するということなのではないでしょうか。調査や研究、そしてその実践という地道な作業がきっと動物と人との関係を本来の姿に導いてくれるものと信じています。

集客手段としての動物園の限界を超え、国と国、国と地域といった新しい視野で動物園を考えなくてはならないそんな時代に突入している今を感じます。

 

では地域における動物園とは・・・これはまた次回で。

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