園長の部屋 公園だより

動物園と絵画

 到津の森公園は指定管理者制度の適応を受けている施設です。指定管理者制度とは公共施設を法人その他の団体に包括代行させる制度です。到津の森公園は(公財)北九州市都市整備公社が特命で代行しています。年限は5年。先日、来年度4月から新たにその代行を受けるべくプレゼンテーションを行ってきました。現在は特命ですから他の団体との競争はないのですが、このご時世、いつ何どき特命が外されるか分からないという不安感が付きまとっています。

 「指定管理」の「管理」という字句にちょっとこだわってみたいと思います。「管理」は英語ではmanagement。人の表記をするとmanagerでしょうか。いわゆる管理人ですから分かりやすいですね。

 動物園運営を果たして「管理」すると言うのでしょうか。「管理」とは現状を変更しないという但し書きを必要とするようです。

 美術館で作品を保管し後世でも同じ状態で見られるようにするというのは「管理」かも知れません。しかしそのようなことが動物園で可能でしょうか。樹木も育ち枯れ、動物も生まれ死にます。施設すら壊さなければならない時も来ます。

 日本に動物園が誕生して130年経ちます。この間の動物園を取り巻く環境は様変わりしています。特に最近、野生動物の生息環境の劣化は劇的とも言えます。当然、野生動物を取り扱う動物園もその影響を受けています。つまりこの数十年の間に動物園の役割が大きく変わりつつあると言っても過言ではありません。

 動物園は現況・現状の変更なしには生きていけないほどになっています。設立当時の(見知らぬ国の見知らぬ動物を人々に提供するという)理念(希望・夢)すら危うくなっています。全く新しい理念が必要なのです。これは動物園の根本を変えるかもしれません。

 実は動物園の園長の英語表記はdirectorといい、managerとは言いません。directorとはdirection、つまり方向を決める人です。新しき理念を求める人。かっこよすぎますか。しかしそれにはそれ相応の責任があります。指し示すべき道を間違ってはならないからです。

 動物園を運営するということは真っ白な巨大なキャンバスに絵を描いていく作業に似ています。自分はどのような思いでこの絵を描くのか。誰に見てもらいたいのか。その見てくれる人を思いながら、ひと筆ひと筆入れていきます。そしてひと筆入れたこの色が全体の調和を乱していないのか、ちょっと遠くから見てまた筆を入れる。完璧はないかもしれない。終わりもないかもしれない。しかし思いは通じるはず。極めてcreative(創造的)な作業なのです。これを「管理」というのだろうか。

 中学生の時に絵がとてもうまい友人がいました。彼の言葉が私の生き方を決めたともいえます。下手な私の絵を見て「岩野、俺はね、瓦を描くのが好きなんだ。ほらここから見える屋根な。黒一色に見えるだろ。でもよく見てみると黒ばかりでなく赤も黄色も茶色も、もしかしたら緑もある。下絵をきちんと描いて瓦を一枚ずつ塗っていくとちゃんと屋根になるんだよ」。

 一つは下絵が重要だということ。きちんとしたアウトラインが必要ということ。もう一つは心が見た色があるということ。みんな違うんだということ。

 意外でしょうが、私は高校時代美術部員だったのです。彼のようになりたいというのがきっかけでした。

 動物園が単なる驚きを提供する場ではなく、文化的な施設と位置付けるならば都市ともに成長を望むべきものでしょう。その成長を肌で知っているのが動物園のスタッフに違いありません。

 動物園は描き続けられる絵だと言いました。つまり成長を続ける絵だと。成長するのは何も動物園のみではありません。動物園が成長すれば市民(都市)も成長するのだと確信しています。そしてそのように成長を続けることができるのは、時と共に成長し続けるスタッフがいるからだと思っています。

 もし指定管理が期限付きということであるならば、ある意味人々の成長も、都市の成長も期限付きだということ。それはとても辛いことではありませんか。 

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