到津の森公園

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いのちをつなぐ動物ガイド~続編;進化をたどる②

さて、①に引き続きガイドツアーのご報告です。

 

続いてサル山へ行きニホンザルの子育てエピソードを。

 

 

 

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初産の母親に代わっておばあちゃんが子育てをしているケースをお話します。

 

すっかりおばあちゃん子の「ほたる」は、何か驚いた時などは、真っ先におばあちゃんのところに駆け寄ります。

 

他にもお姉ちゃんが抱っこしたがるケースもあって、ニホンザルは母系が子育てを手伝います。

 

 

それから坂道を下り、レッサーパンダやアライグマのちょっとした話をしながら移動。

 

世界最大のハトの仲間、オウギバトのところへ。

 

ハトの仲間はみな同じなのですが、鳥だって「ミルク」が出ます!?

 

しかも、オスも!!!「卵を産む」ということ以外、子育ては全て平等・・・なんてうらやましい!

 

 

 

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ちなみにミルクといっても出るのはのどの奥にある「そのう」という袋状の場所に分泌される液体で、体の粘液のようなものなのですが。

 

5%と95%。

 

 

鳥類は95%のオスが子育てに参加します。

 

飛ぶという最大の特徴を持つ鳥類は、そのために非常にたくさんのエネルギーが必要。

 

ヒナに与える餌の量は莫大なもの。

 

このため、父親も餌を与えることは、とっても重要なのですね。

 

 

次にまた哺乳類に戻って向かいのゾウへ。

 

まずは観察!

 

ゾウのおっぱいの場所を探してもらいます。

 

草食動物には珍しく、下腹の方ではなく、霊長類と同じ、胸の位置にあります。

 

仔ゾウの長い鼻がじゃまにならない位置にあるんですね。

 

 

 

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また、良く知られていますが、母系集団で生活します。

 

オスは繁殖期だけ現れ、その後子どもは母親の家族みんなで守り、支えて子育てをします。

 

ちなみに、妊娠期間の長さは当園で断トツ1位の22ヶ月です。

 

 

さて、最後にはやっぱりここ。チンパンジーです。

 

 

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チンパンジーは人と最後に分かれた種です。

 

いわゆる「進化の隣人」彼らを見ていると人のルーツが分かると言われています。

 

出生時は脳の大きさがオトナの2分の1だそうで、それから成長していく過程で経験や知識が増えていくのです。

 

乳離れは5歳。

 

子ども産むまではチンパンジーは群れで生活し、子育ては母親を中心に、きょうだいや父親、群れの仲間が支えます。

 

親の食べるもの、することを真似、群れでも生き方を学んで少しずつ成長します。

 

お母さんは決して甘やかさず、赤ちゃんのすることを許し、そっと見つめることもあれば、時には突き放したり、怒ったりもします。

 

周りが赤ちゃんを喜ばそうと行動することも分かってきました。

 

 

 

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最後にヒト。

 

 

 

 

出生時の脳は大人の4分の1。

 

いかに生まれてからの学びが大きいかわかります。

 

言いかえれば、とっても子育てに時間と手間がかかるということ。

 

だいたい18年はかかりますよね。

 

この、とっても大変な子育てから、人間は今や哺乳類では珍しい、父親が子育てを良くする種、しかも1夫1婦制が当たり前となり、しかもチンパンジーと同じく、群れでの社会です。

 

動物の子育てから学ぶことはとってもたくさんあって、進化をより掘り下げるのも非常に面白いものです。

 

 

最後はこの日は3月11日。

 

参加者の皆さんと黙とうをしました。

 

多くの命が失われた日、多くの命がこれからもずっとつながって行きますように。

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