園長の部屋 公園だより

中島潔 絵画展

 昨日、福岡アジア美術館で開催中の”風の画家”といわれる中島潔の絵画展を見てきました。

 風の中に立つ少女が可愛くもせつない作品です。

 中島潔といってもよくご存じでない方もおられるかもしれません。NHKのみんなの歌の絵を描かれたり、2010年には清水寺の襖絵46枚を描き奉納されています。その中には金子みすゞの詩をもとに大漁という8枚の襖絵も含まれています。

 彼が描く多くの作品は少女とこどもたちです。風景画の中に佇む、あるいは遊び回るこどもたち。それはいつか私たちの見たふるさとの光景です。

 小雪の舞う崩れそうな農家でのこどもたちの語らい、遊び。紅の雨のようなもみじの中の少女。沈む夕日が空を染め、自分の明日は・・・と思いをはせる少女。

 中島潔は18歳の時に母を亡くし、自分を理解する人を失った強い絶望感に包まれます。故郷は自分にとって辛いものでしかない。故郷を忘れ、新しい私の境遇が欲しい。

 中島潔が描く少女の多くは裸足です。彼にとって故郷は裸足で歩いている感覚なのでしょう。忘れようとすればするほど蘇ってくる温かさと冷たさの入り交じった複雑ないいようのないところなのです。

 よりどころのない少女は雨の中、雪の中、暖かな日ざしの中、花にかこまれ、紅葉にかこまれ、多くの四季の中に身を置きながら、やるせない、そしてうつろな境遇をただ素直に見つめます。その少女とは彼の姿そのものなのでしょう。その少女を見守るかのように足元に小さな子犬を描いています。一人では切ない。私を見守って欲しい。見つめていて欲しい。それが母の愛。少女が彼の分身ならば、子犬は母の分身なのです。

 中島潔 69歳の今、なお母の思い出を胸に抱いて絵を描き続けているのです。

 

 「誰もが弱い。私だけじゃない」と教えてくれるような絵でした。

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