到津の森公園

名誉園長の部屋 公園だより

「退任にあたって」

私こと岩野俊郎は今月(3月)31日をもって到津の森公園の園長を辞することにしました。

長きにわたり公私ともにご支援くださった皆様に感謝しています。今まで到津遊園、到津の森公園で20年以上も園長という席を務められたのも、様々な方の様々な形でのご支援の賜物だと本当にありがたく思っています。勉強嫌いな私を支えてくれた動物園や大学の友人(向こうはそう思っていないかもしれませんが)がいたからこそ、この世界に長くいることができたのだと思います。ここで個人名をあげると、「あいつの名前があって、なんで儂の名前がない」という苦情を受けそうなので、あえて列記はしませんが…。感謝しています。

到津遊園は1932年に開園しましたので、そのまま継続されていると考えると90年になります。私が到津遊園に勤め始めたのは1972年の12月(正規に西鉄に勤め始めたのは1973年ですが)ですから、到津遊園、到津の森公園両方合わせると50年になります。その歴史の半分以上に私が関わっていたのだと思うと感慨深いものがあります。自分ながら「やるなあ」と思ってしまいました。

さて、この仕事の後に何をしたいのかと言うと、「パン屋さん」の修行をしてみたいと思っているのですが、この年齢で雇ってくれる人はいるのかしら。ボランティアでもいいなあ。お願いします。歳をとると誰かに何かの恩返しをしたいと思うものだと思いました。

自分のことはさておき、これからの動物園の進むべき方向は今月26日の退任講演会で話そうと思っていますが、すでに満席となっているので、さわりをちょっとお話したいと思います。

前にもこのブログでお話したことがあると思いますが、この数年海外の動物園、特に野生動物の福祉に関する本を読んできました。訳された本がないので、原書で読むのですが(勉強嫌いですから、グーグル君のお世話にもなりながら)、海外の情報がほとんど国内に入って来ていないと実感します。日本には日本独自の判断や理解があって当然ですが、それは相手を知ってからのことだと思います。様々な情報を収集し、そして自分なりに判断する。少ない情報は判断を誤るもとです。「敵を知り己を知らば百戦危うからず」。

このような情報が得られない最大の理由は「固定概念」です。「固定概念」はいわば保身術です。新しいものにチャレンジし傷つくことから逃れることができます。できますが、新しい喜びを見つけることができません。新しい喜びは生甲斐へと繋がります。チャレンジするためには大きなエネルギーが必要です。この第一歩がなかなか踏み出せないのです。そう、肩を押してくれる人が必要です。

今の自分があるのはそのような人たちが自分の周りに居たからだとほんとうにそう思います。ある面接をしている時、受験者が恩師のこのような言葉が忘れられないと言っていました。「ダイヤモンドも炭も元素は同じ炭素だけど、ダイヤモンドになるか炭になるかはその人の努力次第だ」。なるほど炭は炭で役に立ってるけどっていうのは天邪鬼。私はこのように答えてあげました。「確かに同じ炭素だけど、その過程が違うよね。もしダイヤモンドになれるとすれば、例えば圧力とか熱とかすごく大きな力が必要だね。そんな周りの力が炭素を変えていくのでしょ。自分の努力も確かに重要だけど、周りから影響を受けて自分が変わるのじゃないかな。だから周りの人を大切にして、感謝しながら生きることが必要よね。」
いつも謙虚な私は様々な人に感謝しながら生きてきました。誰も信じませんが…。

あら、ちょっと脱線。
必要なのは様々な意見を参考にして、これからの設計を立てるということなのです。「固定概念」は生きる幅を狭くする可能性があります。「固定概念」を破るということはある意味生き方を変える可能性もあります。豊かな未来は、今のあなたの考えから少しだけ新しい何かを模索することにあると思います。素敵な未来をつかむために。

どこかで誰かに会えることはとても嬉しい。そんな幸せがあなたの前にも、私の前にもあります。どこかであなたに会えますように。

 

 

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