到津の森公園

名誉園長の部屋 公園だより

お礼

先週の土曜日に北九州パレスで退任の講演会をさせて頂きました。

朝から降りしきる雨と強風も講演の始まる前にはおさまり、雨男と言われてきた私に天が味方したようでした。2000年5月31日、到津遊園の最後の日に九州管弦楽団の方々に閉園のための演奏をしていただく予定でした。この日も朝から雨で、指揮者の方が「演奏ができず誠に申し訳ない」と頭を下げてくださいましたが、この時も園長が雨男だからと散々嫌味を言われたものです。しかし、雨か晴か、どちらにしろ一介の人間が決めることなんてできません。いわば天命です。

そのような天候の中、北九州パレス「小!」ホールには様々な人がご参集くださいました。本当に感謝しております。お一人ずつご挨拶を申し上げるべきでしたが、それも叶わずここでお詫びを申し上げることでお許し下さい。

講演会に来られなかった方のために、講演会の様子とお話しした内容を少しお伝えしたいと存じます。

生前葬ってこんな感じなんだろうなあ…。葬儀では集まった方々が故人の遺徳を偲ぶというよりも、久しぶりに会う人と様々な思い出の花を咲かすということが多いものです。家族は悲しみにくれていても、日ごろ会えない友人や親戚との話は楽しい。もちろん故人との思い出もあるでしょうが、個々の繋がりの思い出も大切なものです。今回の講演会で思ったことは、このような会は故人の私(まだ健在)も楽しい。一堂に会して一緒に様々な思い出を語り合う機会は稀有なことです。上司部下の関係はそのような関係が失われればただの他人です。人のつながりは損得(利害関係)ではありません。せっかく袖を振り合わせたのですから、出会いを大事にしたいし、感謝したいものです。そのように出会った方々がこの日のためにお集まり下さいました。ありがたいです。

最後に小菅(元旭川市旭山動物園園長)の手紙を成島(元井の頭動物園園長)が読んでくれましたが、昨日、小菅と話し「いいよ、生前葬!」で盛り上がりました。旭川には同年齢の友人がもう一人おり、「あべ弘士」と言います。この三人で「生前葬をしよう」と計画したい。たぶんお通夜付きで、お酒もあるのでしょうね、あべが大酒飲むから(小菅と私は下戸)。夢はこの次につながります。

そうそう、講演の内容も、過去よりも未来という話をさせてもらったと思っています。いつも講演が終わり翌日には講演でしゃべったことを忘れてしまっていますので、記憶が定かではありません。たぶん「固定概念」。固定概念からは未来が見えません。「面白いのは過去より未来」。そのためには未来を見抜く目が必要です。現在の常識や自分自身の固定概念から判断するのではなく、今現在の真理は何かという検証が必要です。しかしその科学も今は真理であっても、10年後20年後も真理であるという保証はありません(篠田謙一「人類の起源」)。だからこそ、今の自分の知識だけでなく様々な知識を得る必要があります。常に勉強。人は「ホモディスケンス」なのですから。

私の歩みは終わったわけではありません。これからの歩みのほうが今までよりもより輝いいている「可能性」もあります。そのような未来を考えることが前に歩く力になると信じて疑いません。

ほんとうにありがとうございました。みなさまのおかげで無事終えることができ幸せです。どこかでまた会えることを楽しみにしています。

追伸。

昨日、江戸家小猫さんから「ぜひとも園長の講演を聞きに行きたかったのだけど、講演会の日程を知る前に高座を決めていたので行けませんでした。申し訳ありません」とお詫びの電話をいただきました。ありがたいです。そう言っていただくだけで嬉しい。
「上野で甘いものをいただきながらお話ししましょうね」。

岩野俊郎

 

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