到津の森公園

獣医さんのお仕事 公園だより

ワイルドライフレスキュー~釣り針の悲劇
レントゲン写真
釣り針はずし処置中

年間350件以上もある、鳥獣保護事例。今回はその中で、毎年5件くらいある「釣り糸や釣り針」を原因の保護事例をお話しします。

今年の2月のこと。カモメが市内で保護されて来ました。見ると「くちばし」から釣り糸が垂れています。こうした場合、ほぼ釣り針を呑み込んでいます。レントゲンを撮ると、やはり食道の奥にささっていることがわかりました。

早速、ある達人から教わった「釣り針外しのテクニック」ではずします。長さ40cmほどの金属の管を口の中に差し入れ、レントゲンで釣り針までの距離を確 認しながら、釣針の手ごたえを探りつつ動かすと、するっという感じで針が管から出てきました。思わず周りにいた飼育員にも歓声があがりました。

しかし、カモメは翌日死亡しました。調べると、刺さっていた食道部分が腐っており、そこから消化物が胸の中に漏れていました。
釣り針が刺さってから保護されるまで、しばらく経っていたためです。とても残念でしたが、人目につかないままこのような事故で死亡するケースを考えると、これはほんの氷山の一角だと思いました。

いうまでもなく、人間の仕業に他ならない事件。
釣りをされる方々へ、人知れず命を落とす生き物がいることを決して忘れないで下さい。

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