到津の森公園

動物たちのおはなし 公園だより

レッサーパンダ「クスクス」のこと

 

 到津の森公園公式Twitterでご覧になった方もいらっしゃるかもしれませんが、

レッサーパンダのクスクスは屋内と屋外を繋ぐトンネルで体を反せながら

行き来する行動をとることがあります。

これはかなり以前から見られている行動で、「常同行動」だと認識しています。

 常同行動とは、特に飼育下の動物に見られる行動で、

例えば、同じ場所を常に行き来する、首などを小刻みに動かす、

柵や檻を舐め続けるなどがあげられます。

クスクスの反りながら行き来する行動もこの常同行動であると考えています。

では、クスクスはなぜこのような行動をするのでしょうか。

 

 理由として考えられるのは、人工哺育で育ったために

ヒト(主に制服を着ているスタッフ)に対して強く依存していることです。

トンネルは休憩しながらも周りを良く見渡せるので

スタッフの姿が見えるのを待ちつつ

行き来を繰り返していると考えています。

 

 もう1つの理由として同じ種であるレッサーパンダ同士の

コミュニケーションをとることが難しく、

少なからずストレスのある状態であると考えています。

2018年12月からメスの「アシタバ」と同居させることで、

コミュニケーションの向上を測れないかと模索してきましたが、

なかなか上手くいきません。

普段はつかず離れずの距離で過ごしていますが、

時折アシタバがクスクスを追う、反対にクスクスがアシタバを追う様子が確認されています。

そうしたレッサーパンダ同士の関係性がクスクスのストレスとなっている可能性も考えられます。

 

 とはいえ、人工哺育だからといって常同行動が出現するとは考えておらず、

こうした行動を減少させるために様々な対策を行っています。

 

ヒトに対する依存 

制服を着用した飼育スタッフに対して依存傾向が強いため、

観察以外の時間はクスクスに対して声をかけたり、

遊びに誘うような行動は行わないようにしています。

クスクスが長くスタッフを見ているときには

姿が見えないようにする、すぐに立ち去るなどしています。

しかし、クスクスにとってはスタッフを見つけて相手をしてもらうことが

楽しみの1つとなっているかもしれません。

そこで、単に遊ぶのではなくハズバンダリートレーニングを行うことで

クスクスの気持ちを整理させることはできないかと取り組んでいます。

 日々のケアであるブラッシングや様々なトレーニングを

一緒に行うことで、クスクス自身も違う楽しみを見つけ、

さらに健康管理にも役立てることができると思っています。

ヒトとの関わり方について時間をかけて試行錯誤しているところです。

 

アシタバとの関係

 アシタバと同居する前からトンネルでの行動が見られており

因果関係は薄いと考えていますが、

多少のストレスになっていることは否定できません。

繁殖適齢期を迎えているにもかかわらず、

その対象をクスクス自身が認識できていないことも考えられます。

現在は繁殖期を前に一時的に2頭を離すなどして様子を見ているところです。

状況により今後は別々に展示することも考えています。

(こちらの件に関しては改めてHPでお知らせします)

 

 他にもクスクスがスタッフに依存しないように、レッサーパンダとして

暮らしていけるように、また、退屈な時間がすこしでも減るように様々な工夫をしています。

 先日ブログで紹介しました、落ち葉プールもこの一環です。

 たくさんの場所にエサを隠して探しながら食べてもらうことや、

笹の葉を出来る限り多めに与えることも

笹の葉の中から好みの葉を選んで食べることで

採食時間の延長に繋げ退屈な時間を減らすようにしています。

それから、室内展示場は遊木を組み合わせることで

逃げ場や休息場所を増やしています。

悩みながらもこうした取り組みを進めているところです。

 

 これからもクスクスが健康で幸せな生活を将来に渡って送ることが

できるよう試行錯誤しながら取り組んでいきますので、

応援していただければと思います。

 

 

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枝に差したリンゴを探して食べるクスクス

20201224-002れさ

落ち葉の中からおやつを探すクスクス

20201224-003れさ

笹を食べるクスクス

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