動物たちのおはなし 公園だより
みなさまこんにちは。
ニホンザル担当大山です。
みなさまにお伝えしなければならないことがあり、こうしてブログを書かせていただきます。
先日8月9日にニホンザル「カスミ」が第2子を出産しました。
出産当日の様子
しかし、8月21日朝にカスミの仔が死亡しているのを確認しました。
前日夕方まで母カスミの腕の中で動く姿や呼吸が確認できており、
特にそれまでと異なる様子は認めませんでしたが、
朝にはぐったりとしており、呼吸はしていませんでした。
前日(8/20)の様子
もう動かない仔をカスミはまだ抱いていました。
これは死児運搬と呼ばれる行動で、ニホンザルではしばしばみられる行動です。
確認されている例では多くの個体(80%以上の個体)が4日以内に手放すとされていますが、
なかには1カ月以上抱き続けた事例も報告されています。
カスミも死亡した仔を手放すつもりはないようで、
近付いた私に威嚇する姿も見られました。
そのため、当日は無理に取り上げることはせず、様子を見ることにしました。
しかし、気温も高くこれ以上抱かせることは
衛生的に他個体へ影響する可能性があると判断し、
8月22日の朝に死亡した仔をカスミから取り上げることにしました。
(死後変化が進んでいたため死因の特定はできませんでした。)
出産当日から、少し力の弱い仔である気はしていました。
10日経っても歩き出す気配がないこと、後肢で母親にしがみつく様子がみられないことから、
少し成長が遅いのを注意して見守っていました。
ですが、群れで暮らす野生動物であることを優先し、
母親が育てている仔を取り上げることはしませんでした。
(万が一群れに戻ることができなかったり、一時的に戻れたとしても追い回される時が来た場合、
先30年近くその個体のQOLを保証できる確信が持てなかったからです。)
仔を運ぶカスミ
これらの判断には、様々なご意見があるかと思います。
動物の考えや気持ちを直接聞くことができない以上は、
飼育員が様々な観点からその時点での最善を見極めなければいけません。
こういった状況に直面した時、その責任の重さをとても感じます。
今後も、当園のニホンザル飼育においては野生動物であることを尊重し、
群れで過ごすことを優先していく方針です。
これからも到津の森公園のニホンザルを見守っていただけたらと思います。
植物をいじるスミレ(2025年生)
さいごに。
生まれてきてくれてありがとう。
少し早すぎる気がしますが、ゆっくり休んでね。
次に生まれてくるときには、もっと豊かなサル山で待ってるよ。
土の中から見つけたドングリを食べるプラム(2023年生)
☆参考文献☆
・松井猛ら著.ニホンザルの死児運搬について.第21回霊長類学会大会
・橋本直子ら著.飼育下ニホンザルMacaca fuscata fuscataにおける死児運搬および死児食い行動の2事例.
第29回霊長類学会日本哺乳類学会2013年度合同大会

