動物たちのおはなし 公園だより
前回、ムササビのくぅの長い治療のおはなしを書きました。
頭の傷を治すため、バックヤードで治療を続けることになったくぅ。
前回のお話はこちら
そして、その治療中に登場したのが……
一見すると、帽子みたいで、ちょっとかわいらしく見えるこの姿。
でも、この“帽子”。
実は、最初からこの形だったわけではありません。
くぅの傷の状態や動き、季節、処置のしやすさ。その時々の状況に合わせて、少しずつ形を変えていきました。
今日は、そんな「くぅの“帽子”」のおはなし。
◆そもそも、頭にテープを巻いていられるの?
治療を始めることになって、まず気になったのがこれ。
「頭にバンテージ巻いて外さない?」
ムササビはじっとしている動物ではありません。
走る
登る
食べる
寝る
そして、毛づくろいする。
そんなさまざまな動きのなかで、すぐ取っちゃうんじゃないか?
最初はそんな心配がありました。
とりあえず、やってみるしかない!と頭に傷を保護するガーゼの固定のためテープを巻いて試してみることに。
ー次の日ー
・・・あれ、意外と綺麗についたまま。外してない。
傷の様子と1日経った湿潤具合を確認するために再度処置
そして、また頭にバンテージを巻く作業
ーまた次の日ー
・・・ついてる、意外と取らないぞ。
くぅは、思っていたよりも頭のバンテージを気にしていないようでした。これなら、傷を治すための処置を続けられる。まずは、ここが分かったことが大きな一歩でした。
ただし、これはあくまでくぅの場合。
他の動物でも、同じムササビでもみんな同じようにバンテージをつけていられるとは限りません。個体によって、気にする程度も、毛づくろいの仕方も、動き方も違います。だからこそ、実際にその個体の様子を見ながら判断することが大切です。
まずは、傷を覆うガーゼが外れないようにバンテージをつけていられることが分かりました。次に大切なのは、傷が乾燥しないよう、バンテージをきちんと維持することです。
毎日処置したいところですが、くぅにストレスがかかるかもしれない。3日おきの処置になると傷が乾燥してしまう。なので、2日おきに処置をしていくことになりました。
◆今度は、擦れが気になる
バンテージが外れないようにする。
それはうまくいった。
でも、別の問題が出てきました。
バンテージが当たるところが擦れてしまうのです。
特に気になったのが、耳のまわり。せっかく頭の傷を治しているのに、別の場所に傷ができてしまっては困ります。
そこで、バンテージの素材を変更。やわらかい素材のものに変えてみました。
どこが当たっているのか。
どこなら擦れにくいのか。
頭にぐるりぐるりと巻いた後、くぅの耳の位置や皮膚の状態と当たり具合を見ながら、少しずつチョキチョキ切ったり、折り曲げたりして調整していきました。そしてとれないようにぐるっとテープをひとまき。
◆暑い!
治療をしていたのは夏。
ただでさえ暑い季節に、頭をバンテージで覆っています。
「暑いよねぇ。頭に熱がこもらないようにするには、どうしたらいい?」
今度は、バンテージの軽量化です。
必要なところは残す。
でも、いらないところは減らす。
例えば、とれないようにぐるっと巻いたテープ、これは取れてしまってもバンテージを維持できていたので、なくしました。ぐるりぐるりと二重に巻いていたテープも、耳の穴の切り方によって多く巻かなくても上手くいき一巻きに。
少しでも軽く、少しでも暑くならないように。
傷を守るだけではなく、くぅが少しでも楽に過ごせることも考えながら、また形が変わっていきました。
◆帽子だけじゃなく、スタッフも…
変わっていったのは、帽子だけではありません。治療を繰り返すうちに、私たちスタッフも少しずつ手順や巻き方を工夫していきました。
「この注射は最後にすると嫌がるから先にしておこう。」
「こう準備しておけば早く終われる。」
ムササビにとって、処置は決して楽しい時間ではないはず。少しでも処置の時間を短くして、くぅの負担を減らせるように。
そうしているうちに、帽子の形も、処置の仕方も、少しずつ変わっていきました。
こうして並べてみると……
「ずいぶん変わったなぁ。」
と思います。
でも、振り返ってみると、かわいく見える形になったのは、たまたま。「かわいい帽子を作ろう!」と考えていたわけではありません。
外れないように。
擦れないように。
暑くならないように。
そして、できるだけ負担を少なく。
その時その時に必要なことを考えていたら、少しずつ形が変わっていった。
それが、くぅの帽子でした。
治療開始から1ヶ月が経ち、傷も最初は10ミリあったものから4.5ミリへ
……これで、傷も順調に治っていくはず。
そう思っていたのですが
くぅの治療は、まだ終わらなかったのです。
・・・つづく。泣
くどうさくらこ

