到津の森公園

園長の部屋 公園だより

「動物園動物のウェルフェア」

いきなりこのような題名で申し訳なく思っています。

今日のコロナウイルスのパンデミックで、日常生活が取り戻せずこれを日常としなさいという「ニュー・ノーマル」という語が定着しそうな感じの昨今です。すでにどこにでも存在するようなウイルスとなりつつあります。つまり誰も罹患しても不思議でない病気となっています。ですから1日も早くインフルエンザのように確かな治療薬とワクチンがある病気になることを祈るほかはありません。

その中で、何年か前から訳して来た「動物園動物のウェルフェア」の本が8月末に出版されました。標記の題は数年前にアメリカで出版された「Zoo Animal Welfare」の訳です。

海外、特にヨーロッパやアメリカでは動物のウェルフェアが盛んに叫ばれるようになり、ご存じのように「シーシェパード」のような先鋭的な保護団体も存在します。ウェルフェアが重要なのはなにも「イルカ」に限ったことではありません。動物園動物すべてに等しく「ウェルフェア」が生き渡るべきだというのが現在の世界の潮流です。

「ウェルフェア」は通常「福祉」と訳されますが、動物には英語のまま「ウェルフェア」と言うが常になっています。動物に対する「ウェルフェア」は、このようにしたら動物が喜ぶだろうな、楽しいと思ってくれるだろうなということを提供することではありません。野生下での生きるための行動の選択肢を数多く提供することと言われています。時には野生下で感じる「恐怖」も必要になるかもしれません。そのために隠れる場所や仲間は必要ですが。

生きていくということは様々な条件が必要でそのような条件を用意することが「ウェルフェア」に繋がります。

前記の「Zoo Animal Welfare」を読み、このようなことが日本の動物園に欠けているのだと実感しました。実は日本には日本語で書かれた動物園動物の「ウェルフェア」に関する本がありません。私は翻訳の専門家でもなければ、生態学者でもなく、行動学者でもありません。しかし、動物に等しく「ウェルフェア」はあるべきだと思っています。そのような思いから門外漢(完全な門外漢ではないでしょうが)でありながら、この本を訳す決意をしました。その結果が「動物園動物のウェルフェア」です。利益もなくこの出版を引き受けてくれた出版社には本当に感謝しています。

この本の書評には「直訳的だ」、「専門用語ではない」と批判を頂きました。ほんとうにそうだと思います。その批評は素直に受けたいと思います。しかしその方はその書評の最後にこのように書いて下さいました。その一言で私の苦労が報われました。

「とは言え、こうした問題が日本語で読めるようになったこと自体は素晴らしいことだと思います!!」。

 

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